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ドライアイの真実:涙ではなく“油”がカギだった

従来、ドライアイといえば「涙の分泌不足」が原因とされ、人工涙液の点眼で涙を補う治療が主流でした。
しかし、近年の研究や現場での観察から、この常識は大きく揺らいでいます。
日本有数の眼科医である深作秀春医師(深作眼科)が指摘するように、ドライアイの真の原因の約80%は「涙の油成分の不足」にあるとされています.
この油分は、まぶたの縁にあるマイボーム腺から分泌されるもので、涙が蒸発せずに目の表面にとどまり続けるために不可欠な成分です。
■ マイボーム腺とは?
マイボーム腺は、まぶたの内側に多数並ぶ皮脂腺で、「涙の油層」を作り出します。
この油層がなければ、涙はすぐに蒸発し、目が乾いてしまいます。
■ ドライアイの3大原因(近年の見解)
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マイボーム腺機能不全(MGD):約80%
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涙液分泌の低下:およそ10%
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結膜や角膜の炎症などによるドライアイ:残りの10%
■ 近年の研究紹介
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Nelson et al., 2011 のレビューでは、ドライアイ患者の**86%がマイボーム腺機能不全(MGD)**を有していたことが報告され、従来の「涙不足説」が再考される契機となりました。
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また、Geerling et al., 2017では、MGDがドライアイの主要原因であり、点眼薬による一時的な潤いでは根本的な改善に至らないと指摘されています。
■ 現場での治療の転換
こうした知見から、現在はマイボーム腺を温めて詰まりを解消したり、油分を含む点眼薬(例:ジクアス、ヒアレイン油性点眼)を使用したりする治療が注目されています。
私たちの体は、構造も機能も「油(脂質)」と深い関わりを持っています。筋肉を動かす関節も「潤滑油」が必要なように、目もまた同様です。
単に「潤いを補う」のではなく、「油を出せる体」に整える。それがドライアイの根本解決のカギである、という新たな視点が今、広がり始めています。
【参考文献】
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Nelson JD, et al. (2011). The international workshop on Meibomian Gland Dysfunction: report of the definition and classification subcommittee. Invest Ophthalmol Vis Sci. 52(4):1930–1937.
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Geerling G, et al. (2017). The International Workshop on Meibomian Gland Dysfunction: executive summary. Ocul Surf. 15(4):576–585.