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2025-10-08 17:38:00

最新の知見:乳酸(ラクテート)は疲労物質ではない?

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最新の知見:乳酸(ラクテート)は疲労物質ではない?

 

まず、「乳酸=疲労物質」という考え方自体が、運動生理学の分野では見直されてきています。

 

乳酸(ラクテート)の正しい理解

 

  • 運動強度が上がると、グルコース(あるいはグリコーゲン)を使ってエネルギーを得る過程で解糖が活発になり、ピルビン酸→ラクテートという代謝過程が関与します。

  • かつては「乳酸(lactic acid)が筋肉を酸性化させ、筋収縮を妨げる → 疲労を引き起こす」と説明されることが多かったですが、これは簡略化された誤認です。

  • 最新のレビューでは、ラクテートはむしろ代謝燃料として使われたり、組織間のエネルギー交換(“ラクテートシャトル”仮説)に関与することが示唆されています。 Frontiers+3PMC+3PMC+3

  • 例えば “Modern Perspective of Lactate Metabolism” では、「ラクテートの存在が疲労を引き起こすというより、むしろストレス下で生体が代謝を維持/調整する手段の一部である可能性がある」との見解が示されています。 PMC

  • また、“Lactate doesn’t necessarily cause fatigue: why are we surprised?” というレビューでも、乳酸=疲労物質説に対する批判が述べられています。 PMC

  • さらに、遅発性筋肉痛(DOMS:筋肉痛・こわばりなど)との因果関係についても、乳酸は長時間残留せず、痛みの時間経過とも一致しないという理由から、乳酸が主因ではないとする報告があります。 PMC+1

  • アウトサイド系の解説でも「乳酸は実は悪者ではない(“Lactic acid has long been villainized … new research shows it doesn’t impair muscle function”)」という記事もあります。 Outside Online

 

これらから、「乳酸が疲労の主たる原因であり、それを除去すれば回復する」という単純なモデルは、現代の運動生理学では支持が弱くなってきています。

 

クエン酸(シトリック酸)そのものの効果を調べた研究

 

それでは、クエン酸が疲労や運動パフォーマンスに対して何らかの効果を〈科学的に〉示した研究はあるのでしょうか。以下、代表的なものをいくつか紹介します。

 

研究名/論文 内容・結果概要 解釈の注意点
Effects of Citric Acid and L‑Carnitine on Physical Fatigue 被験者にシトリック酸を投与したところ、生理的ストレスを低下させ、肉体的疲労を軽減する可能性があるとの結果。 PMC+2PubMed+2 小規模研究・被験者条件・プラセボ対照の厳密性などを吟味する必要あり。
Effects of citric acid oral intake before low intensity exercise on blood lactic acid and feeling of fatigue 低強度運動前にクエン酸(1,000 mg)を摂取することで、ラクテート濃度および疲労感が軽減されたという報告。 ResearchGate 「低強度運動」「少人数」「感覚評価を含む」という点から、一般化・強度の高い運動への適用には注意が必要。
Fatigue Alleviation Mechanism of Citric Acid Determined by Gene Expression 動物モデルで、クエン酸摂取が糖新生促進、炎症抑制などを通じて疲労軽減に寄与する可能性を示唆。 Semantic Scholar+1 動物実験 → 人間適用には慎重な解釈が必要。遺伝子発現変化だけでは「疲労回復」と直接結びつけづらい。
Effects of Dietary Citric Acid on Metabolic Indicators and Gene Expression マウスにおけるクエン酸経口投与で、運動下での乳酸蓄積抑制やTCA回路活性化は確認できなかったとの報告。 SCIRP 条件(断食状態など)が特異的であったり、運動介入がない場合も含まれていたりするので、運動時応答を捉えきれない可能性あり。

これらを総合すると、クエン酸に「疲労軽減・回復促進効果がある可能性を示す予備的なエビデンス」は存在しますが、「強度の高い運動後の疲労回復に対して確実に効果がある」と断言できる十分なエビデンスは、現時点では限定的です。

さらに、もし「乳酸除去/分解」という作用機序を主張するならば、前述のようにそもそも「乳酸=疲労物質」という仮説が見直されつつある現在では、その因果仮説を証明しなければ説得力が弱くなります。

また、クエン酸が実際に体内でどこまで早く分布し、どの程度ミトコンドリアやTCA回路に作用できるかなど、薬物動態・代謝過程も慎重に考える必要があります。

 

結論(現時点の総括)

 

  • 「クエン酸を飲むと疲労が回復する」という主張は、古くから広まった通説であり、体感として支持されやすいものですが、最新の科学的知見ではその効果を明確に支持する強い証拠は十分ではありません。

  • また、乳酸(ラクテート)を疲労物質とみなすモデル自体が、近年の運動生理学では再検討の対象になっており、「乳酸を除去すれば疲労回復する」という因果関係モデルは単純すぎる可能性があります。

  • 一方で、クエン酸摂取がストレス軽減や炎症抑制、糖新生促進などを介して「疲労感軽減」に寄与しうる可能性を示す研究も存在します。ただし、これらは多くの場合条件付き・限定的な実験・動物モデルによるものであり、人間の高強度運動後疲労への普遍的適用には慎重さが求められます。

 

 

したがって、HP記事にまとめる際には、「クエン酸は疲労回復に効果あり、とは断定できない」「しかし仮説・可能性として興味深い」というスタンスを取る方が、科学的信頼性を保てます。

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