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敗戦があったからこそ「今」がある
15年前、僕がまだプロボクサーになって2年ほどの時、後楽園ホールで戦った相手の牧島選手がハニーラルヴァに遊びに来てくれました。
デビューから5連勝の後、連敗という負のルーティンから抜け出せずとどめの3連敗目を喫した相手でした。
国際ボクシングジム、牧島洋介選手。
そのあと僕はタイに渡り練習、ボクサー人生として覚悟を決めた最後のトレーニングを積み帰国。
固定観念から抜け出せる事ができ、自分自身のボクシングに対する正直な想いで試合にのぞむことができました。
3連敗したから気付けた事、2連敗じゃダメだったんです。
そのあと、5年以上は負けずに17連勝まで突き進みそのまま日本チャンピオンに輝く事ができました。
そして6度の防衛を果たし、そのあと「自分自身に正直でいたい」という想いから、
日本チャンピオンベルトを返上、ボクシング協会に返しました。
好きだったボクシングがいつの間にかスポンサー会社や応援してくれる人のためだけに戦うようになってしまったんです。
好きだったボクシングがいつの間にか、人のために、そして他人のせいにして続けるようになってしまったんです。
ある時、応援してくれる人に僕が言われた言葉があります。
「人のせいにしてボクシングをするな、勝った負けたを応援してくれる人のためにとか言い訳するな」
そう、自分が好きで始めたボクシングなのだから自分のためにやるんだ、という言葉でした。
その言葉を聞いて、
チャンピオンになって強くならなきゃ強くならなきゃという呪いのような毎日がいつしか、何のために戦っているんだろう?
「強くなりたいからボクシングを始めた」
訳じゃない。
伴流ボクシングジムの身体の理論や、人間の身体の自然な動力をもって打って1発で倒すボクシングが好きだったから。
チャンピオン目指してたわけじゃなく、伴流ジムで練習して過ごす事が好きだっただけ。
「強さ」を求めてはいたけど、ボクシングが強くなって「強く」なる訳じゃないコトを気付けただけで充分だったんです。
「チャンピオンになれて強くなる訳じゃない」
それが気付けたのはチャンピオンになれたおかげ。
それでよかったんです。
そこまでで。
だからチャンピオンベルトはボクシング協会に返しました。
6度もチャンピオンベルトを巻いて彷徨ってしまっていました。
もう、自分自身とは裏腹に「頑張りたくない」。
自分自身に正直でいたい、と。
そういうボクシング人生ですが、やはりあの3連敗した時はまだそれが見いだせていなかった時期。
あの時、諦めていたらここまで気付けなかったでしょう。
3連敗ということはプロボクシングだと1年は勝っていなかった。
1年勝っていないとさすがにどうしていいか分かりませんでしたが、
その時は「まず1勝」。
1度勝ったら辞めるか考えよう。そんな想いで練習を積んでいたあの頃が懐かしいです。
そしてその連敗を喫した相手がこうやって遊びに来てくれると、とても和みますね。
だって憎しみ合ってボクシングするわけなじゃい。
憎しみ合って戦うわけじゃないところが、ボクシングそして格闘技の良いところ。
もちろん仲のいい友だちと戦うわけじゃありませんし、しゃべったコトがある人と戦う訳じゃない。
それでも戦い終わって勝敗がついた選手同士が憎しみ合ったりするところを見たことがありません。
お互いをたたえ合い、気持ちよく正直な顔で向き合える瞬間。
美学を感じる、プロボクサー人生でした。
そして今では敗戦してもそれをネタにとてもいい笑い話ができています。
その時は悔しいけれども、どれだけ悔しくなれるか嬉しくなれるかでその数年後には特大の笑い話ができます。
特大の笑い話やネタを作るためにも、「今」を一生懸命ってコトですね。
three time lose heart