②毎日更新の情報
なぜ筋肉を減らしてはいけないのか?(前半)
〜健康的なダイエットには「筋肉の維持」が欠かせません〜
「ダイエットをするなら筋肉をつけながら痩せましょう」と、耳にしたことはありませんか?
このアドバイス、実は最新のスポーツ栄養学・生理学の観点からも非常に理にかなっています。
● 筋肉を失う=代謝が落ちる
筋肉(特に骨格筋)は、安静時でもエネルギー(カロリー)を消費する「代謝の主役」です。
このエネルギー消費量は 基礎代謝(BMR) と呼ばれ、1日の消費カロリーの約60〜70%を占めるとも言われています。
筋肉が減れば、当然この基礎代謝も低下し、同じ生活でも太りやすく痩せにくい体質になってしまうのです。
👉(参考)Wang et al., 2010, Obesity Reviews
● 筋肉を維持すれば、体重が減らなくても体脂肪は落とせる
たとえば…
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体重60kg・体脂肪率20% → 脂肪量は12kg
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体重は60kgのままで体脂肪率18% → 脂肪量は10.8kg
つまり、体重はそのままでも1.2kg分の体脂肪が落ちていることになります。
しかも体重が変わらないということは、脂肪の代わりに筋肉量が増えているということです。
この変化は見た目に大きく影響します。体重ではなく「体組成(何で構成されているか)」が大切なのです。
● 極端な食事制限が危険な理由
体重を早く落とそうとするあまり、
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食事量を極端に減らす
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炭水化物や脂質を過度にカットする
などの無理なダイエットは、筋肉をエネルギー源として分解してしまう「カタボリック状態」に陥ります。
その結果…
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筋肉減少 → 代謝ダウン
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栄養不足 → 排便・排尿のコントロール低下
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水分不足 → 筋肉の7割が水なので、さらに筋肉量が減少
こうして体は「痩せにくく、リバウンドしやすい」状態に。
👉(参考)Tipton & Wolfe, 2001, Journal of Sports Sciences
● ダイエット成功のカギは「筋肉を守ること」
ハニーラルヴァでは、体重の変化よりも 体脂肪率の減少と筋肉量の維持・増加 に注目しています。
✔ 極端なカロリー制限を避ける
✔ 水分摂取を怠らない
✔ 筋力トレーニングを行い、筋肉を維持・増強する
これらを守ることで、リバウンドしにくく、見た目も引き締まった健康的な身体を作ることができます。
🔜 次回予告
次回は「筋肉(除脂肪体重)を減らしてしまうとどうなるか?」「筋肉が多いとなぜダイエットに有利なのか?」をさらに深掘りして解説します!
【汗をかいても痩せない?】汗と脂肪燃焼の本当の関係とは
❌「たくさん汗をかいた=脂肪が燃えた」ではありません
夏の運動やサウナスーツ着用で大量の汗をかくと、「今日はいっぱい脂肪が燃えた!」と思いがちですが、これは大きな誤解です。
汗をかくこと自体は、体温を調節するための反応であり、脂肪燃焼(エネルギー消費)とは直接的な関係がありません。
💡汗の正体とその役割
人間の身体は運動や気温上昇によって体温が上がると、汗をかいて体を冷まそうとします。これは「発汗による気化熱」による体温調節です。
つまり、汗の量が多いのは環境が暑い、もしくは水分が十分であるというサインにすぎず、「頑張った証拠=脂肪が燃えた証拠」ではないのです。
🧪【研究から見る】季節と代謝の関係
実は、寒い季節の方がエネルギーを多く使いやすいことが、近年の研究で明らかになっています。
❝気温が低いと体は体温を保つために熱産生(thermogenesis)を行い、基礎代謝が増加する。これは「非ふるえ熱産生」と呼ばれ、特に褐色脂肪細胞が関与する❞
(参考:van Marken Lichtenbelt et al., 2009, Cell Metabolism)
たとえば、基礎代謝が1800kcalの人の場合、寒冷期(2~4月)と暑熱期(8~10月)では約10%=180kcalの差が出ることもあります。
これは、同じ運動をしても寒い時期の方が痩せやすいということを意味します。
⚠️サウナスーツと脱水のリスク
「サウナスーツで汗を大量にかいて短期間で体重が減った!」という話もよく聞きますが、これは体脂肪ではなく水分が抜けただけです。
脱水状態になると、
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筋出力の低下
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体調不良(頭痛、吐き気)
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熱中症リスクの上昇
などの健康リスクが高まります。
また、脱水時には筋グリコーゲン(筋肉内のエネルギー)も消耗しやすく、運動パフォーマンスが落ちるとも指摘されています(Sawka et al., 2007, Journal of Applied Physiology)。
✅正しく痩せるには
本当に脂肪を燃やすには、以下の3つが重要です:
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筋肉量の維持(=基礎代謝の維持)
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継続的な有酸素・筋力トレーニング
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適切な食事・水分摂取
「汗の量」に惑わされず、エネルギー消費の本質=筋肉と代謝に目を向けてください。
ウォーキングでは足りない?糖尿病と「速筋」の重要な関係
面白い動画を見つけたのでご紹介させてください。
順天堂大学大学院 スポーツ健康科学研究科の町田修一教授が話す「第154回老年学・老年医学公開講座」にて、「速筋の低下が糖尿病とどう関係しているか」がわかりやすく説明されています。
📺 動画はこちら:
【第154回老年学・老年医学公開講座】町田修一教授
💡速筋とは?そしてなぜ重要?
筋肉には「遅筋」と「速筋」があります。
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遅筋(赤筋):持久力に優れる(例:マグロ)
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速筋(白筋):瞬発力に優れるが、使わなければ衰えやすい(例:ヒラメ)
私もセミナーなどでよくこの「マグロとヒラメ」の例を出して説明していますが、ウォーキングで鍛えられるのは主に遅筋。しかし、年齢と共に低下しやすいのは速筋の方です。
🩺速筋と糖尿病の深い関係
速筋の低下は糖尿病とも密接な関係があります。
実は、筋肉量の低下、特に速筋の減少は、インスリン抵抗性の悪化や糖代謝異常を引き起こすことが研究でも示されています。
ウォーキングなどの有酸素運動も重要ですが、速筋を刺激する筋力トレーニングなしには、糖尿病の根本改善にはつながりにくいのです。
車の売上と糖尿病の関係?(動画より)
町田教授の講演では、「トヨタ車の累積販売台数」と「糖尿病患者数の増加」が一致しているという、興味深い統計グラフが紹介されていました。
つまり、便利な世の中の進化とともに、体を使わなくなり、速筋が低下し、糖尿病が増えてきたという指摘です。
まとめ:だからこそ「筋トレ」を
特に高齢者や糖尿病予備群の方々には、筋力トレーニングこそが健康寿命を延ばすカギになると考えています。
「歩いているから安心」ではなく、使っていない筋肉が確実に落ちていることを自覚して対策することが重要です。
【運動神経って何?】実は存在しない“神経”の正体
🧠「運動神経」という神経は存在しない?
「うちの子、運動神経がいいんです」「運動神経が鈍くて…」
日常でよく聞くこの言葉。実は「運動神経」という名前の神経は、医学的には存在しません。
では、この“運動神経”とは一体何を指しているのでしょうか?
🔍答えは『コーディネーション能力』
いわゆる「運動神経がいい」というのは、筋力や持久力のような単純な力ではなく、脳と神経、筋肉の情報伝達をいかに正確に・素早く・的確に行えるかという“情報処理能力”のことです。
この能力は「コーディネーション能力」と呼ばれています。
この概念は約40年前、旧東ドイツのスポーツ科学者たちが提唱し、冷戦後に世界中に広まりました。
現在では子どもの発育・発達やトップアスリートの育成にも欠かせない理論とされています。
🔧コーディネーション能力の8つの柱
運動における情報処理能力=コーディネーション能力は、以下の8つに分類されます。
| 能力名 | 内容 |
|---|---|
| ①リズム | 音楽や環境に合わせてリズミカルに動ける |
| ②反応 | 瞬時に反応し適切に動ける |
| ③定位 | 自分や物体の位置を空間的に把握できる |
| ④分化 | 手足の力加減や道具の操作を思い通りに行う |
| ⑤柔軟性 | 関節可動域を最大限に使いこなす |
| ⑥連結 | 各部位を滑らかにつなぎ協調的に動く |
| ⑦変換 | 状況に応じて動きを素早く切り替える |
| ⑧バランス | 姿勢や重心を安定して保つ |
この8つが高い水準で連携している状態を、私たちは「運動神経がいい」と感じているのです。
💡ハニーラルヴァの指導方針において
当ジムでは、筋力や持久力だけでなく、「動かす力」=コーディネーション能力の育成にも注力しています。
子どもから大人まで、どんな世代でも伸ばせるのがこの能力の特長です。
📚参考文献・学術的出典
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Baur, H., Müller, S., Hirschmüller, A., Huber, G., & Mayer, F. (2006). Comparison of proprioceptive and balance performance between professional and amateur soccer players. Clinical Journal of Sport Medicine, 16(2), 115–120.
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Hirtz, P. (1985). Koordinative Fähigkeiten im Sport. Volk und Wissen Volkseigener Verlag, Berlin.
(旧東ドイツ時代にコーディネーション理論を展開した代表的文献) -
体力科学(日本体力医学会誌)などでも近年、コーディネーショントレーニングの有効性が紹介されています。
